472: 名無しさん@おーぷん 19/07/16(火)04:15:52 ID:wbd.ox.bk
私は売れないイラストレーターなんだけど、知り合いのつてで市民センターの “小学生一日お絵かき教室” みたいなのの講師を頼まれた
イラストレーターったって、私の専門は説明図で〇や□や専門用語ばかりの色気のないもので、世間でイメージされるような華やかなものじゃないから一度断ったんだけど、
「ギャラが安くて(www)引き受ける人がいないのでお願い」
と知り合いに言われて、
(何事も経験かな)
と思って行ってみた。

当日、20組ほどの小学生と付き添いの親御さんが来ていた。
絵の道具を用意して、私には指導できる腕前もないから好きなように書いてもらうことにした。
子供たちはワイワイ描き始めて、親御さんたちは私に
「こんなのでいいんでしょうか?」
とか聞いてくるので、私は
「ええ、まずは絵を描くことが好きになるのが一番ですよ」
とか偉そうに答えていた。




その中で一人、おそろしくむっつりした女の子(小学2~3年くらい)がいた。
親御さんもおどおどしている。
(絵が嫌いなのかな?)
と思って覗き込むと、
なんと上手なこと!
野原に咲いている花の絵なんだけど、いきいきとはつらつとした描線で、構図も決まっている。
思わず
「あらまあ、あなた上手ねえ!」
と声をかけたものの、女の子はむっつりしたまま顔も上げない。
親御さんが恐縮してぺこぺこしていた。

20組の親子の間を見回って、虫の絵ばっかり描いてる子とか怪獣とか何かのメカとかありがちな少女漫画風お姫様とかいろんな絵があって、それぞれほめて『もっと描いてね』と促していたんだけど。
例のむっつり子ちゃんは黙ったまま1枚目の花の絵を仕上げた後、2枚目にとりかかっていた。
この子にだけは心から
「あなたってすごい上手!もっと描いて!」
と言わずにはいられなかった。

終わりの時間が来て、できた作品は各自持ち帰ることになってたんだけど、
帰り際、むっつり子ちゃんが私のところに来て、黙ったまま2枚目の絵を突き出した。
画面いっぱいに白鳥が羽ばたいて水面から飛び立つところで、飛び散るしずくが虹を描いていた。

「すばらしいねえ!」
とほめると、むっつり子ちゃんはぐいぐいと絵を押しつけてきた。
親御さんが
「あの、この絵、先生にもらっていただきたいんだそうです」
私はびっくりして
「いいの?」
と顔を覗き込むと、かすかに頬をゆるめて
「うん」
とうなずいた。

「どうもありがとうね、またいっぱい描いてね」
と別れたが、別れた後に気がついた。
(20年くらいしたら、むっつり子ちゃんは有名になるんじゃないだろうか)
(白鳥の絵に、サインと日付を入れてもらうべきだった)
と思ってしまう自分の心は汚れているわ。



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